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そしてとある繁華街の真ん中で車が止まった。
「ここでいい?」
そう指差された先にあるのは……いかにも高級な面構えのお店。
暖簾の文字には大きく『鮨』とも書かれている。
「あの、えっと……」
「お寿司嫌いだった?」
「いえ…好きですけど、そうじゃなくて……」
もちろん寿司は大好きだ。
でも……こんな高級店、お会計で何人もの諭吉が飛んでいくのが想像できる。
そんな手持ちは今無い。
「僕のおごりだから、大丈夫大丈夫」
いや、それは逆に何だか申し訳ない気持ちが勝る。
でも彼は強引に私の腕を掴んで店の中に入っていく。
「これぐらいは、カッコつけさせてよ」と言って。
店に入ると、すぐにカウンターから「いらっしゃいませ」という元気な声が飛んで来る。
二人だと彼が伝えると、すぐさま着物の店員さんが奥の座敷のテーブル席の方へと案内する。
その後ろをまっすぐ歩いている様子からして、恐らく何度も来ているっぽいのがわかる。
それに席に案内されるなり「おまかせコースと、僕は車なので彼女に今日のおすすめのワインを」とメニューも見ずに言っている辺り、やっぱり彼は何度もここに来ているらしい。
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