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こうしてみると……ますます二人はそっくりだ。口角の上がる角度も、びっくりするほど同じ。
佑依が彼にそっくりなのは喜ばしいことであったが……こうなった今、似てなければ良かったのに。そう思わずには居られない。
彼は物音を立てないように静かに立ち上がると、私のもとへ。
目の前に座って、すぐそこにあるローテーブルに肘を付く。
「さっきの人は、友達?」
「ママ友……?よく会う顔見知りのママさん」
ただ彼女は年齢は近いが、もう小学生と幼稚園の子供も居る。なので各方面に顔が広くて……いわば私は、ママ友CクラスDクラスのレベルだろう。
「それで俺は地球の裏側に居ることになってんだ?」
さっきとは違う片方の口角だけを上げる、意地の悪い笑顔を浮かべた。
「……シングルマザーより単身赴任ってしといた方が、検索されないでしょ?」
『幼い子を連れてのシングルマザー』
そんなもの格好の噂の餌食だろう。
それならば単身赴任としておいた方が無難だ。そう思ったのだ。
夫は単身赴任。海外の危ない地域に赴任中。
次の勤務地はまたこの街になる予定。
これだけの情報を話せば、あら少し大変だねぇ……そう言われるだけで、何も素性を怪しまれることはなかった。
そのために、大企業の支社が沢山あるこの土地を選んだのだから。
「それじゃぁ何か困ってることは?」
「私が困ると思う?」
そしてできるだけ、嫌みったらしい言い方をする。
「お金に困ることが、この私にあると思うの?」
そう問いかけると、呆れたように息を吐き出す。「そういうことじゃないんだけど」と。
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