123人が本棚に入れています
本棚に追加
/121ページ
そんななるべく刺々しい態度をとる私に、彼は書類を広げた。
「これ、全部書いて」
差し出された書類は、三枚。
認知届け、DNA鑑定同意書………それと、婚姻届も。
しっかりと名前には小林 佑一朗と、彼の名が記されている。
「念のために、DNA鑑定もしようと思ってる」
「……書くと思うの?」
私は書類を突き返すように、掌で彼の元へ押し戻した。
「でも全部書くまで俺は帰らない」
「そんな!!」
ガンと手を机に叩き付け、身を乗り出して威嚇。ギッと目を細めて睨み付けた。
「これは決定事項、その為に来たんだ」
彼は一つも動揺せず怯むこともなく、静かに構える。
「もう逃がさないから。絶対に史織と佑依を連れて帰る」
彼は立ち上がって、私を見下ろす。
私を見つめる目は真っ直ぐで、彼の本気具合が嫌でもわかる。
(……絶対に書いてたまるものか)
私も負けじと、ギッと睨み返した。
二人で睨み合うも束の間、ドッドッと壁を蹴る音がした。
「あ、佑依……」
この音は佑依が起きた音だ。
佑依の元へ駆けつけると、案の定うっすらと目を開けて、寝ぼけながら壁にキックしている。
「おはよう、佑依」
佑依はさっきの彼と同じ角度で口角を上げて、ズリズリと私の元へ。
そしてダイブするように私の胸に飛び込む。この瞬間が……私が一番幸せを感じる瞬間だ。
最初のコメントを投稿しよう!