二人の別れ道──過去

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──そしてその行為は、何度も続いた。 何度も彼は私の体内に侵入し、何度も奥に欲望を吐き出し続けた。 常に意識は朦朧とし、気を失いかける。 その度にあの言葉を言わされて、体内へ吐き出された生暖かい感触で呼び戻される。それが繰り返し行われた。 それは"禁忌"の行為である。 そんなことを知りながら、背徳感が更に興奮を呼び身体が悦ぶ。 もはや理性というものが全て飛んでいき、ただの獣と化して彼を求め、受け入れていた。 そして次にはっきりと意識を取り戻すと──あまりの惨状に目眩がした。 隣で横たわるように眠る彼。 散々乱されたベットのシーツ。 押さえ付けられた跡が残る、左右の腕。 胸からお腹にかけて広がる、歯を立てられた赤黒い跡。 そして何より──身体の中に残る感触。 それらの全てが、夢ではなかった証拠。 全て夢なのではないか、そんな一縷の望みは瞬く間に散って行った。 ──ずっと私は、あの頃のような私の家族のような家庭を築きたかった。 幸せな家族が欲しかった。 それに目を瞑って、ノコノコ彼との関係を続けてきた結果がこの有り様だ。 ただただ絶望に打ちひしがれた。 やっぱり私は、幸せになれないのだと。 だけど……ぼんやりとしている暇はない。 すぐさま服を着ると、逃げるようにその場を去った。 タクシーで帰宅し、片っ端から必要なものをトランクに積める。貴重品は特に厳重に。 そしてある程度の最低限の手配だけをして、すぐさま空港へと向かった。 ──行方を眩ます方法は知っている。 これはずっと"最終手段"として取っておいた。あの時調べていた手段を、まさか使うとは思ってもなかったけれど。 勿論名残惜しいものは沢山ある。だけど全部を捨てていく。彼との思い出も一緒に。 もうここには戻らない。 そう強く心に決めて、飛び立つことを決意した。 ──妊娠が判明したのは、それから一ヶ月後のことだった。
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