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確かに私の都合で、佑依から父親を奪うことに罪悪感はある。彼が佑依のことを愛おしく思っているのであれば、尚更。
私が全てを呑み込めば、全て解決するのだろうか。
でも……どうしても、蟠りが解けてくれない。
「あ、史織起きた?」
彼が私に気付き、顔をこちらに向ける。もちろん佑依も。
彼は私に駆け寄ると、きつく抱き締める。「大丈夫?」と聞きながら。
少しだけ震えている、抱き締める腕。
胸の温もりも、頭を撫でる、繊細な指も。
その全てが心の中で波を打ち、波紋のように広がっていく。やっぱりどうしても『愛おしい』という感情が、心の底で沸き上がる。
でもそれを振り切るように、「大丈夫」と言って彼を離した。
それに、ただでさえ……
「ぎー!ぎー!!」
足元で佑依は、唸りながら私にしがみついている。敵意を持った目で彼を見ながら。
それを見て、思わず二人で吹き出してしまう。
「ごめんなー佑依。ママちょっと貸して?」
彼が苦笑いしながらそう言うが、佑依は相変わらず今まで見たことないぐらいの敵意むき出し。さっきまでの仲の良かった雰囲気はどこに行った。
「佑依ー機嫌直して。そうだ、仲直りに三人で出掛けよっか?」
彼はそう言うと、佑依を抱き上げる。私に「外出の準備して」と言って。
彼はそのまま佑依を玄関まで連れていっているようだ。
私はあわてて外出用のバッグにオムツと念のためのベビーフードを詰める。もう時刻は夕方前だから、遅くなっても良いように。
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