まるで氷のようで──過去(佑一朗)

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まるで氷のようで──過去(佑一朗)

この世で一番嫌いな人物がいた。 それは──祖父だった。 一代で会社を大きくした曾祖父。その子供である祖父。 祖父を表す言葉は『二世という言葉に甘えた暴君』それ以外の説明は不要だ。 自分の感情だけで、斬り棄てる人を決めつける。自分に甘い人だけに蜜を吸わせる。 有能は人ほど斬り棄てられ、無能の側近だけが残る会社。 こんな会社が上手く行くはずもない。 いつも会社はギリギリの所で、なんとか父が持ちこたえさせていた。 正直早く消えてくれないか。 そう疎まれるぐらいの存在だった。 ──そんな祖父は、事故で死んだ。 ゴキブリのようにしぶとく、迷惑なぐらい元気だった祖父。 その死に様は……祖父らしいく最期まで人に迷惑をかける、はた迷惑な死に方だった。
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