まるで氷のようで──過去(佑一朗)

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──しばらくすると、事故の状況がわかってきた。 祖父が事故を起こした場所は、二車線の広い道。大きな下り坂の下の交差点。 そこの歩道に車が乗り上げて壁に衝突し、炎が上がった。 状況的に、恐らくブレーキの不良による事故だろうと。元々効きが落ちていた所に、急な下り坂に耐えられなかったのだろうというのが現場検証でわかった。 元々、緊急に必要な修理ではないものの代車を手配でき次第修理に出す予定だったのだと、整備を担当した者が語っていた。 ただその整備の者は、祖父に対して嫌な過去があったらしく……『ひょっとしたら』という思いもある。 ただ大破し炎が上がった車内からは、確証に至るものは全て焼け焦げて見つかることはなかった。 間の悪いことに……とある夫婦も、事故の巻き添えとなった。 その巻き添えになった二人が──史織の両親だった。 二人とも、病院に搬送されてすぐに息を引き取ったらしい。 そんな二人を殺しておいてまでも、しぶとく生きていた祖父。 全身火傷に骨折、内臓も破裂し、それでも尚も生きていた。 どうしてこんな奴が生きているのだろうか。 事故の状況を聞いた後なら、尚更。
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