(11): きみが基準のキングダム

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「知ってる、けど」 「じゃなくて。恭介って呼んでってこと」 深呼吸どころじゃない。 バクン、とまた心臓が派手に動いた。 それって、下の名前で、呼ぶってこと……? 「む、無理。私、男の子を名前で呼んだことないし」 「だからだよ」 「えっ」 「杏奈の、特別が欲しい」 そんな頼み方ってずるい。 断れるわけがないもん。 耳を傾けてじっと待っている深見くんを、うらめしく見つめながら、唇を開く。 「……恭介、くん」 「くんは要らない。もう1回」 「っ、恭介」 「うん、それで」 それで、と頷いた深見くん────じゃない、恭介があんまり甘く笑うものだから、文句のひとつも言えなくなった。 でも、まだ慣れないからしばらくは深見くんって呼んでも、許してほしい。
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