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ストレス
23時頃、ピンポーン、とインターホンが鳴る。
「はい」
重い体を引きずってモニターに近付く。
『白澄、恣羅だよ』
その声を聞いた瞬間、またか、と思った。
「恣羅………」
『白澄、いれて。恣羅、怖いの』
「なにが」
わざとらしくも聞こえるその声に淡々と返す。
『白澄がいないのが。怖いの、不安なの。最近、白澄がどっか行っちゃう夢を見るの』
「ごめん、無理………。俺とお前の関係は、もう3年も前に終わっただろ。送るから待ってて」
俺は恣羅の提案を断ると、肌寒いだろうと考えてパーカーを羽織って家を出た。
「白澄、最近家に入れてくれない。なんで? 恣羅は白澄の彼女だよ?」
「だから、俺達の関係はもう終わってる。とっくの昔に」
俺は恣羅の前を歩き出す。
恣羅は俺の後をなにか言いながらついてくる。
毎夜のように、こんな会話をしている。
さすがに、ストレスは溜まるばかりだ。
こんな女、本当はもう縁を切りたいのに。
でも、昔のとある出来事が俺の心を引きずっている。
“罪悪感”という名の呪いで俺をこの女に縛りつける。
俺は、もう昔のことなんて忘れたいのに。
ほぼ毎日のように俺の家を訪ねてくるこいつが忘れさせてくれない。
本当は、もう開放されたい。
こんな弱さを人に見せてはいけない。
俺は、人気者でなくてはいけないから。
彼女に振り向いてもらうために。
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