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紛れもない、その日、その時、爆発は起きる。
私たちは抱きしめ合ったまま爆風に巻き込まれ壁に叩きつけられた、今回もものの見事に腹が引き裂かれて──。
「あかね──」
海翔がしっかりと抱きしめてくれる、私も背に手を回して抱きしめ返した──ぬるりとした感触、見れば手の平は肌の色が見えないほど鮮血に濡れている。
「マジだったわ……本当に、俺たち……」
「海翔」
血に濡れた手で海翔の頬を撫でた、もう血の気を失っている海翔は弱々しく微笑んだ。
「大好きよ、海翔」
「俺もだよ、あかね、大好きだ。これからもずっと一緒にいような」
言ってキスをした、周囲のざわめきもアラーム音も気にならなかった。
大好きな人といる──それだけが真実だ。
☆
タイムリープに慣れたなんて言わない、ただ諦めただけ。
再度やってくる201×年の9月21日。
いつものように私はラボに戻ってきた。
血まみれの海翔も、直前までしていた冷えていくキスも、こんなにもはっきりと覚えているのに。
はあ、とため息が出た。私はなぜ永遠を生きなくてはいけないんだろう──その時白衣のポケットに入れたスマホが震えた。仕事相手の場合もある、念のためにと取り出し画面を見れば、電話番号の羅列のみ。つまりは電話帳に登録されていない番号──普段は通信アプリでやりとりしていたからうろ覚えの番号だけれど、私はその電話番号の持ち主を知っている。
嘘でしょ、まさか──ドキドキしながら通話ボタンを押した、耳に当て「はい」と応答すれば、小さな深呼吸の後、声がする。
『あの──須藤あかねさんの電話で間違いないですか?』
スマホは合成音だとは言うけれど、それでも間違いなく聞き覚えのある声だ。
死の間際に大好きだと言ってくれた、その人だ。
「──海翔、あなた──」
続く言葉は涙にのまれた。
よくぞこの番号を覚えていてくれたと嬉しかった、お互い登録だけして一度も使ったことのない番号なのに。
あなたとは3年で終わらないことが嬉しかった。周りは同じ3年でも、私たちの思い出はどんどん積み重なっていく、次の3年間も共に歩めるのが嬉しかった。
でもあなたのタイムリープが、私が何度もあなたとの逢瀬を望んだせいだったらごめんなさい──叫びたいほど嬉しいことも、許して。
『あかね、今すぐ会いたい』
嬉しい願いに私は何度も頷いていた。
いつ終わるとも知れない運命だけれど。
あなとなら永遠を生きていける。
終
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