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私は改めて私の身に起こっていることを伝える。
以前も1回話しているけれど、やはり彼には初めて聞くことで驚いていた。でも今回は自分もタイムリープをしているのだ、疑いようもない。
海翔も9月21日に戻ってきていたという。なぜなのかと思いながらも日常を過ごしていたようだ。
「タイムリープを、何回も──?」
「うん。何度も戻ってきて、何度も海翔に恋をしてるのよ」
「すごいな、何度会っても俺たち、好きになるんだ」
海翔は嬉しそうに言って額同士を突き合わせる。
「まさに運命の恋人?」
「うん、きっとそう」
答えればキスをしてくれる、何度もしているのにとても興奮するのは同じ身の上だと思うからか。肉体は違えど初めて「魔の3年」を超えたのだと思うと、感慨ひとしおだった。
同じ3年間のはずなのに、違う3年間だった。私たちの心だけは6年分になるんだもの。この感動は誰に判るというのだろう。
私たちは思う存分逢瀬を楽しんだ。
そしてやってくる9月21日。
無理矢理にでもあの地に行かされるのよ、とは言ってあった。
事実、今回のリープでは私は元同僚の祝賀パーティーに呼ばれた、小さな賞をもらえたという。
それにはよかったら交際相手も連れてきなと言われた、海翔はまったく関係ないのに、私だって辞めて久しいのに。
海翔に伝えればなるほどねと笑った、タイムリープは手ぐすねを引いて自分たちが来るをの待っているのだと理解したようだ。
ならば飛び込んでやろう、そして今度のタイムリープがどうなるか確かめようというのだ。
もしかしたら、これが最後のタイムリープになるかもしれない。それは期待ではあるけれど、不安でもあった。
もしかしたら海翔のタイムリープは気まぐれだったのかもしれない。
あるいは今度は海翔だけが永遠と思えるループに囚われたのかもしれない。
はたまた、今度こそふたり揃って天に召されるかもしれない──。
後悔はしたくないという気持ちは一致した、私たちは十分に愛を伝えあってから現場に赴く。
せめて過去に戻るにしてもなにか目印みたいなものが残せればいいのに──あなたを愛したという印を。
未来から過去にはなにも残せないのが悔しい。
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