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③2度目の輪廻
そして、私は再度戻ってきた。
前回同様、3年前の、事故と同じ日、9月21日──これは偶然ではない。なぜこんなことが起こるのか。
タイムリープとかタイムスリップとかいうものが、わが身に降りかかっている。
私は自身に与えられている実験と合わせて、この現象にについても調べ始めた。
仲間はいないかとラボのみんなにも声をかけみた、事故の日にそばにいた人たちだ。
それとなく聞いたけれど、皆の反応は嘘や隠し事があるようではなく、タイムリープなどしていないようだ。
なぜ、自分だけ──。
可能性を探ってみる。
私はガンを抑制するための新薬の開発を担っている。その成分にそんな作用があるのだろうか。だけれど特に変わった物質を使っているわけではない、他に条件が要るのだろうか。
爆発自体は無縁だと思ったのは、巻き込まれて亡くなった人がタイムリープをしていないから。私の研究の手伝いをしてもらって可能性を探ることはできるだろうか、でもみんなそれぞれ忙しいし。
当てのない研究は、まさに雲をつかむよう。なにせ可能性を試すこともできない、仮にマウスにこれだと思う成分を接種させても、マウスが3年後に戻ったことが立証できないからだ。
やはり無謀なことなのか。でも原因が判ればタイムリープをしなくて済むかも、あるいは思いのままに過去と未来を行ったり来たりできるかも──。
果たして事故の日が近づいてくる。
私はその日は休暇を取った、できるなら、あの死は味わいたくない。
だが恐ろしいことに、私はそこへ行かなくてはならないようだ。
タクシーででかけると、なぜか運転手は大きく道を間違えた。
「すみません──ここどこだよ?」
運転手がぼやく、文句を言いたいのは私の方だ。
丘陵地にある研究施設、周りには民家はもちろん、商業施設もないのに、なぜ来たのか。
「ああ、すみません、料金メーター止めますんで。ええっと、どこへ行くんでしたっけ」
運転手が車を停めてカーナビをいじり始める、私はスマートフォンで時間を確認してゾッとした──もう爆発が起こる時間だ──!
「ごめんなさい、とりあえず車を出してもらっていいですか?」
一刻もここから離れたい。
「え、ええ、でも」
運転手がもたもたしているように見えて、苛立ってしまった。
「ここまでで結構です、お金、ここに置きますね」
示されている料金より多く置いて、勝手にドアを開けた。
「え、あの、お客さん、本当にごめんなさい、ちゃんと駅まで送りますから」
そう駅までだって遠い、でもここからはシャトルバスも出ている、それに乗っていく時間もない──そう思った瞬間、視界が真っ白になった。何事かと思うより先に強烈な爆風が叩きつけ、ずいぶん遅れて大きな爆発音が響き渡った。
私は3度目の死を迎えた。少しばかり状況は違うけれど車に打ち付けられ、腹には大きな破片が刺さり車に縫い付けられた。
運転手さんは無事だったようで、ずっと声をかけてくれている。
大丈夫ですか、っていうけれど。
どうみても大丈夫じゃないですよね、体、真っ二つなんです。
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