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☆
8度目の再会で、私は初めて身の上を話した。
笑われてもいい、気持ち悪いと思われてもいい。どうせ忘れて3年後に会うんだから。
幾度も同じ201×年から202×年を過ごしていると語った。
でもタイムリープなんて、初めは信じてはくれなかった。
でも、未来に起こること。
外国の大地震や、サッカーの優勝チーム、芸能人の結婚や離婚などを語り、書き記しておいた。何度も繰り返し見てきたそれは、日付だって暗記している。
それらが次々的中し海翔は驚き、興味を示してくれた、馬鹿にした様子はない、本当に興味津々のようだ。
「預言者やったら儲かるよ!」
「うーん、でも経験上、それは結果が変わっちゃうから、できないんだよね」
馬券の件で懲りたもの。
「何度も戻ってきて、何度も海翔に恋をしてるのよ」
「じゃあ、あかねは21年分の俺を知ってるってこと? すげえ!」
そんな風に思うんだ、変な人と思うと同時に、私はこの人を好きになって、本当によかったと思った。
そしてやってくる9月21日。
かつての上司から忘れ物があるから取りにおいでと言われた。3年も置きっぱなしだったものだ、処分してくれて構わないと言ったけれど、捨てるなら自分でと言われ、じゃあ着払いでいいから送ってとお願いしたら、取りにおいでよ、みんな会いたがってるよと誘われた。
そして指定されたのが9月21日。
その日でないと、その上司がラボにいないそうだ。だったら言伝でもよさそうだけれど、なにがなんでもその場へ行かねばならないのが、魔の9月21日ということだ。
まさにその日にラボに行くと海翔に伝えれば、海翔は意気揚々と答える。
「俺も行く!」
ええ?
「もしその日に死ななかったら未来が変わるってことだろ? あかねも言ったじゃん、一緒に歳を取りたいって」
海翔の提案に頷いていた、もしこれで運命が変わるなら──。
しかし定められた運命は、それほど簡単ではなかった。
爆発が起きて海翔はとっさに私を庇ってくれたけれど。
まったく意味がなかった。
海翔は即死、私もいつものようにゆっくりとした死を味わう。
もう呼びかけてもさすっても、なんの反応も示さない海翔の体を抱きしめたまま、私は死んでいく。せめてあなたと同時に息絶えたらよかったのに。あなたの亡骸を抱いているのはちょっと寂しいわ。
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