⑤何度も繰り返す輪廻

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☆ 今回もすぐにラボを辞めて、カフェでアルバイトを始める、いつものように海翔はやってきた。 注文カウンターに近づく顔を見ながら心の中でお礼を言っていた。だって爆発の時、身を挺して守ってくれたんだもの。それだけでかっこよかった。 海翔も亡くなってしまう未来もあるということだ。 もしこれがパラレルワールドだとしたら、いったいいくつあるんだろう? 私が死んでしまった後の未来は無数があるんだとしたら、なんか生きる気力無くすわね。ううん、むしろ未来は無限だと捉えるべきか。 「いらっしゃいませ」 私は笑顔で接客する、海翔は事務的に注文する。 「アイスコーヒーをひとつください」 「え?」 思わず声が出た、海翔が怪訝そうに私を見上げる。 その目は他人を見る目──違うの、海翔はいつもカフェオレを頼むから、驚いて……。 「アイスコーヒーをひとつ、お願いします」 聞こえなかったのかと思われたのか、注文を繰り返され、私は慌てて注文を通した。 確かにこれまでにも小さな変化はあったけれど。 これもきっと、そのひとつか。 ☆ そしてこのリープでも私からアプローチをして海翔と恋人になれた。 海翔にしてみれば最初の「え?」がかなり腹に立っていたみたい、でもそれで印象に残って、私が親し気に声をかければすぐに打ち解けてもらえた。 そして今回も幸せな時間は、終わりを告げる。 「今度、あかねが働いていたラボに見学に行くことになったんだ」 見学? あそこ、そんなことしてたっけ? 「俺、今、サッカーの練習見てるじゃん?」 時々だけれど、週末、友人がやっているサッカークラブの手伝いをしているのだ、それも今生で初めてのこと。 「その子たち連れて行くんだ。あかね、元職員だろ、一緒に行かね? 懐かしいだろ」 誘われてまさかと思いながら聞いていた。 「いつ?」 答えは当然、 「9月21日」 ああ、またあの爆発があるのか。待って、子どもたちも巻き込まれる? 「──どうしても行かないとだめなの?」 「年に何回かのレクレーションで、子どもたちも楽しみにしてる」 確かに。映画を見に行ったり、工場見学にもよく行っている。 「別の日にしたほうが」 「んー、先方の指定日なんだよな」 「でも、平日でしょ。子どもたち、行けなくない?」 「それが所属してる子の多くが通ってる小学校で代休なんだって、だから半分くらいは行けるから、ちょうどいいかなって」 そんな馬鹿な──。 「ラボなんて、何にもないわよ」 「そうそう入れる場所じゃないし、科学(science)とか化学(chemistry)とかに興味ある子もいるから、喜んでるよ」 「──でも」 「どうしたの、あかね。そんなに嫌なの?」 「あの──」 また話そうか、私がタイムリープしていることを──でもこの場で言えば馬鹿なことをって言われそう。断る言い訳にしてはひどいレベルだ。 爆発するなんて言ったら、私が爆弾犯として捕まったりして──そうなればまた違う未来があるだろうか、そう思いながらも海翔に犯罪者として疑われるのは嫌だった。 「──ううん、ごめん、いい。私も行く」 爆発する時間もいつも同じだ、その時間だけは子どもたちは別室に行ってもらおう。爆発の規模はその時々で変わるから、どうなるか判らないけれど。
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