解説1 魔法について

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解説1 魔法について

 この舞台はいわゆるファンタジー世界であり『魔法』が存在する。  何を魔法とするかは微妙だが、ひとまず、以降の定義が当てはまる現象を全て魔法と呼称する。そして魔法を使うものが魔法使いだ。  ひとまずの定義だと、先の話のギマはわかりやすく魔法使いである。そしてシーグルもまた魔法使いと言える。  ギマの操る魔法は炎熱、シーグルの魔法は肉体強化だ。身の丈ほどの大岩など普通の人間に持ち上がるものではない。  この世界の空気は如何なる物質にもなりえる謎の因子でできており、そこに存在するすべて、人すらもその因子が変質した結果と言える。この因子を変質させることで発生する現象が魔法、となるのだが、そう定義すると、マッチを擦って火が起きるとかわかりやすいものはもちろん、水たまりが凍る、雷が起きる、雨が降るなど自然現象もこの因子の変質となり全部魔法になってしまう  ゆえにどこまでを魔法とするかが微妙なのだ。  自然現象は除外するとして、人為的な変質のみを魔法とする手もあるが、そうするとシーグルの力は魔法ではなくなり、後続の説明ができなくなるので『人為的』でなくとも魔法とする。またこの世界では人間以外にも魔法を使う『なにか』が多数存在する。そこに意思があるかは定かではないがこちらも後で説明する。  まず、生物は生きているだけで無意識に魔法を行っている。  空気を吸って吐く、水や食べ物を摂取し排泄する。生物の体が行っているある種の変質である。    シーグルの『魔法』はこの延長にある。謎の因子を体に取り込み、強い肉体に変質させているのだ。  この体質は遺伝しやすく、勇者の子は勇者になりやすい。シーグルとオルパ姫の子孫にも代々この肉体強化が受け継がれていくことになる。  この自らの体を変質させるタイプを内因魔法とする。  内因魔法はシーグルも持つ肉体強化の他、物理耐性、状態変化耐性、感覚器強化、高次治癒能力、高次知能、大声、それらの複数融合など様々なものがある。言ってしまえはこの舞台にいるほとんどの人が何らかの内因魔法を常時発動させているようなもので、平均より上の熟練度があれば、そういう能力を持っていると見做される。  なので、逆に言えばある程度極めた状態でない限りはありがたみなどなく、この舞台に暮らす人にとっても魔法と意識されることはまずない。  生きている環境や努力でもある程度得られる能力であるため、それがそのままその民族の特徴となることも常である。草原に暮らす人々であれば視力が優れているとか足が速いとか、極寒で暮らす人々なら寒さに強い、などだ。  普通では?と思われるかもしれないが、この舞台で暮らす人々、生命はその順応性が非常に高い。  皆が無意識に周囲の謎因子を活用しているためである。  シーグルのような勇者級となる者は珍しいにしろ、百人に一人程度は何らかの超人と言える能力を持つくらい、この舞台ではありふれたものなのだ。  対してギマのものは外因魔法である。世界を満たす謎の因子を直接変質させる、あるいは反応させることで特定の現象を起こしている。  素養自体は内因魔法同様にほとんどの者が持っている。先にも述べた通り、人もまた元を正せば同じ因子の変質物であるためだ。しかしそれを実際に発動できるかは別問題で、自らの能力だけで目に見えるほどの現象を起こせる者はほとんどいない。割合で言えば発動できるだけで勇者級なのだ。  この素養が所謂マジックポイント(以降MP)であり、発動できる条件が『×××を覚えた』というコマンドを持っているか否かである。  このコマンドを得るのが、先天後天あるものの偶然部分になる。  厄介なことにこの舞台での人類発生以来、かなり長い間どうやれば得られるのかが全くわかっていなかったものなのだ。したがって発動できるだけで特別視され、ギマのように対した効果が出せなくても勇者として売り込む十分な材料になってしまう。またその時代の支配者自体が外因魔法を操ることも多かった。  外因魔法と言うだけあって超常的な能力が他者にわかりやすく、少なくともはったりにはなるのである。  逆に言えば膨大なMPを持っていたとしても生涯持ち腐れるという者も珍しくない。  MPの高さというのは一種の体質であり、遺伝によるところが大きく、これを膨大に持てるというのは内因魔法の一つになる。  つまり外因魔法とは、正確には外因魔法と内因魔法の合わせ技なのだ。  外因魔法は因子変質と対物変質に二分できる。  因子変質は世界を満たす謎因子そのものを変質させて起こす現象を指す。  因子を異なる複数の物質に変化させて反応させることで、光、熱、電撃を起こしたり、直接毒素に変換したりもする。また因子自体を状態変化することで浮遊や氷結などの現象を起こすことも可能だ。  対物変質は特定の物体、もしくは他者に対して何らかの現象を起こすことである。  所謂白魔導士が使うような魔法だ。  一般的には因子変質に比べて、効果範囲を限定する代わり高い効果が望めるものになる。内因魔法を対物・他者にコピーするような能力になることが多く、その効果も様々になる。  ただ結局そういったコマンドを持てなければ意味がなく、またそれらの効果をはったり以上で発動できるほどの潤沢なMPを持っていなければ劇的な効果はない。  先の話の時代では、そろそろ外因魔法の主な効果がはったりであるとバレつつあるため、ドーリー王国のように対策する国が増えてきている。そんな時代なのだ。  コマンドの発動も意志だけで出来る場合もあれば、呪文の詠唱、筆記や特定の道具を必要とする場合もある。  同じ効果でも人によって複数の発動方法があることが、既にこの舞台の時代でも確認されている。  人により、というわけで、先の話のギマは技名をアクション付きで宣言していたが、これが発動条件かと言われると、その前に無言のまま浮遊していたので、彼は意志のみで魔法の発動が出来たのではないかと予想できる。  彼は暗殺であればその能力を生かせたのだろう。  稀有の才能を持っていたにもかかわらず、目立ちたがりな性格、またどんな魔法が飛んでいくかを敵に宣言してしまうような親切さが彼の命取りになってしまった。
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