2.日だまりとエンカウント

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「ハチミツか……」  え、と問い返すと、ジークムントは「何でもない」とまた少し顔をしかめた。 「ミオカ殿は確か、私にこの茶を飲んでほしいと言っていたな。リヒターベンから持参したと」 「はい。大した荷物は持ってきませんでしたが、お茶に関してはお気に入りのものを数種類持参しました。このハーブティーは特にリラックス効果が高いブレンドで、癖も少ないので、ぜひ殿下にと思いまして」 「リラックス効果? 耳慣れない言葉だが、これを飲めば心労が癒えるということか?」 「はい」  笑顔で力強く頷いたら、なぜか相手が固まった。でもそれは一、二秒のことで、ジークムントは再びカップの中身をグルグル回し始めた。そのカップがついに口元へと運ばれる。 「……爽やかな味だな。飲みやすい」  驚きを含んだ声に、ミオカはパッと表情を輝かせた。 「ありがとうございます。私の自信作なので、そう言っていただけて嬉しいです」 「あなたが、作ったのか?」 「作ったと言っても、土から育てた訳ではありませんが。ハーブをもらってきて、ブレンドを色々考えるんです。カモミールとミントのバランスが悩ましくて、完成までに何十杯も飲んでしまいました」 「茶の話をする時は饒舌(じょうぜつ)なのだな」  まずい。つい高めのテンションでペラペラしゃべってしまった。 「申し訳ありません。お耳に障りましたか?」 「そうではない。ただ、ミオカ殿がそんな風にしゃべることに、少し驚いた」  ジークムントは戸惑(とまど)っているようだった。茶褐色の瞳からナイフのような鋭さがなくなっていて、例の王気も出力が安定せず、威圧感があるようなないようなである。何だか新鮮で、ミオカはパチパチと青い目を瞬いた。  
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