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ウェイターに椅子を引かれたのもあって、渋々その前に座った。
私は苦手なのだ。
三十歳と年下で上司……なのはいいとして。
いつもそのかけている、銀縁眼鏡と同じくらい冷たくて、にこりとも笑わないこの上司が。
すぐに料理が出てきはじめ、黙々と食べる。
私も口を開かなければ、彼もなにも言わない。
仮にも見合いなんだからここは、男性側がなにか適当な話題を提供すべきでは、なんて自分勝手なことを考えてしまう。
「あ、あの」
「なんだ?」
どうでもいいが、睨まないでもらえないですかね。
相手が私で、不本意だったのかもしれないけど。
「い、いい天気、です、……ね」
はぁーと彼がため息を落とし、ナイフとフォークを置く。
失敗した、と悟ったがもう遅い。
「あの、その」
「そうだな、いい天気だ。
こんな日は家中のものを洗濯したくなる。
シーツや布団カバーまで全部」
まるで、青空の下にいるかのように、課長の目が眩しそうに細くなる。
だからなんだ、とか冷たく返されることを想定していたうえに、いつもの彼からは想像もできない答えで戸惑った。
「洗濯とか、するんですか」
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