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「朝からサカんな、ガキ!」
「いってー」
思いっきり背中をバシッ!と叩いたら痛がっているが、知ったもんか。
そもそも間違いだったのだ、あんな約束をしたのが。
彼が小六の卒業式。
卒業祝いをくれとか言われ、あろうことかファーストキスを奪われてしまった。
さらにこれでゆか姉は俺のモノ、とか得意げに言われ、さすがにぶっ叩いていたね。
『お前が背伸びする側のうちは、恋人とかなれるかー!!』
『え、じゃあ、ゆか姉が背伸びする側になればいいんだよな』
言質は取った、とばかりに彼がニヤリと笑う。
否定もなにもできないまま、中学の間に彼は雨後の竹の子よろしくにょきにょき伸び、高一のいまでは私を見下ろしている。
「高校の入学祝いにゆか姉のハジメテ欲しいなー」
「うっ」
彼が好みじゃないのなら、すっぱりそう言って断るんだけど。
あの、怪人メガネとか言っていたあほっぷりが嘘のように、眼鏡は眼鏡でも紺縁スクエアの眼鏡がよく似合う、イケメンに育ってしまって。
一緒に歩いていて恋人に間違われるのもまんざらではない。
「だ、大学の入学祝いに……」
「えー、そうやってまた逃げる」
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