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逃げるってさ。
だいたいどうして、付き合うからすっ飛んで、ハジメテなんて話になっているんだ?
「俺が大学入学するまで待ったら、ゆか姉いくつよ?
そんな年まで処女でいいの?」
「うっ」
よくない気もするが、高校生になったばかりの彼とそういうことをする、倫理観とか気になるというか。
「俺、ゆか姉のためにいっぱい勉強したよ?
優しくするし、安心していいからさ」
勉強ってなんの勉強したんだ、ってツッコみたいけど。
レンズの向こうから細くなった瞳に見つめられて、なにも言えなくなった。
「だから、さ。
ハジメテ、俺にちょうだい……」
近付いてくる顔を間抜けにもぽけっと見ていた。
唇が触れて離れる。
「今晩、親いないから。
待ってる。
じゃあ行ってくるね、結花里」
呆然と、違うホームへ向かう彼を見送った。
発車を告げるけたたましい音で我に返る。
「えっ、はっ!?」
今晩、私はどうしたらいいんでしょうか……?
【終】
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