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ミルクレープ~子供扱いしないで~
「なに、怒ってんの?」
「……」
黙ったまま私がなにも言わないので、運転している彼がはぁっと小さくため息をつく。
おかげでますます、意固地になった。
「黙ったままじゃわかんないでしょ」
黒縁の眼鏡の奥で、困った子だねとでもいうふうに彼は笑った。
子供扱い。
いつもそう。
たった四つしか違わない癖に。
確かに?
彼の方が課長で私の上司で偉いんでしょうが?
でも仕事とプライベートは別じゃない?
なのに彼はいちいち、年上風を吹かせてくる。
そういうのがいつも、私のかんに障る。
「どうせ課長は、私なんてお子さまだって思ってるんですよね!」
「は?」
なにを言われているのかわからないのか、課長の口がぽかんと開いた。
「今日だって私が気に入ったピアス、そんなの似合わない、って」
自分でもかなり背伸びしたデザインだっていうのはわかっていた。
けど私は――課長と、釣り合いたいのだ。
背が高く、スーツとツーポイントの黒メタル眼鏡が似合う課長は、どこからどう見てもできる格好いい、大人の男、で。
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