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「わかってますよ、それくらい!
でも、眼鏡のせいで好きな人に振られたって聞いて、まだ反対できるんですか!?」
ぼろぼろと涙が落ちていく。
こんなの、八つ当たりだってわかっていた。
みっともなくて情けなくて、泣き止もうと眼鏡を外してごしごしと目尻を擦るが、一向に止まらない。
「……なんだよそれ」
静かな課長の声は恐ろしく低く、涙が瞬く間に引っ込んだ。
私がこんなわけのわからない理由でキレて泣き喚くから、きっと怒らせた。
「ソイツをここに連れてこい。
眼鏡のお前がいかに魅力的か、俺がわからせてやる」
「……へ?」
課長の口から出てきたのはまったく予想だにしない言葉で、思わず変な声が出た。
「眼鏡をかけているからってその人の魅力が下がるわけないだろうが。
いや、それよりも眼鏡のおかげで上がるってもんだろ」
課長は力説し、うんうんとひとり頷いている。
しかしそれは特殊意見では?
世間は〝眼鏡を外した方が可愛いね〟が圧倒的多数なわけだし。
それでも課長がそうやって怒ってくれるのが嬉しかった。
おかげでだいぶ、失恋の痛みは和らいだ。
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