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「試してくれとか誰も、一言も……!」
「んー?
あ、ソイツの言うキスはこれじゃないのかもな。
あっちも試しておくか」
課長は私の話をまったく聞いていない。
それどころか勝手にひとりでなにやら考えている。
再び課長の手が伸びてきて私の頬に触れ、さっきのキスを思い出してびくりと身体が小さく震えた。
「……怖いか?」
うっすらと涙の浮いた目でこくこくと頷く。
これでやめてほしいと願ったものの。
「わるい。
その顔、さらに煽るだけで逆効果」
もう片方の手も伸びてきて私の顔を掴み、逃げられなくなってしまった。
傾きながら近づいてくる課長の顔をただ見つめる。
ゆっくりと重なったそれは、恐怖をほぐすかのように優しく私の唇を何度も啄んだ。
次第に身体から力が抜けていくと同時に困った問題が。
さっきは一瞬だったからよかったが、今度は呼吸をするタイミングがわからない。
もう限界だと課長が離れた隙に息をしたら、そのタイミングを待っていたかのようにぬるりと肉厚なそれが口の中へと入ってきた。
瞬間、閉じていた目を思いっきり見開いていた。
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