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身体を引こうとするが、いつのまにか後ろあたまに回った課長の手ががっつり掴んでいて、びくともしない。
課長が私に触れるたび、甘いさざ波が身体を駆け抜ける。
私の身体を課長の熱が満たしていき、体温を上げた。
課長の手が私の髪をぐしゃぐしゃに掻き乱していく。
こんなの、知らない。
キスがこんなに、気持ちいいなんて。
「……はぁーっ」
長い口付けが終わり、自分の口から落ちていったため息ともつかない息は、酷く甘かった。
「ほら。
これでも邪魔にならない」
ぼーっと見上げた彼が、自身が濡らした唇をぺろりと舌で舐めた。
それを見て一気に、顔から火を噴く。
「……セ、セクハ、ラ」
言いながらも自信がない。
最初は無理矢理ではあったが、途中から喜びを感じていたのを否定できなかった。
「訴えるなら訴えていいぞ。
ただ俺は、お前だから理由をつけてキスしたかった。
それだけだ」
何事もなかったかのように課長はポスター丸めを再開した。
私も同じように黙ってまた手を動かす。
ドキドキと速い心臓の鼓動が落ち着かない。
課長は狡い。
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