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『オレ、眼鏡かけてる女とか、ムリ』
これはつい三十分ほど前、思い切って告白した男から言われた言葉だ。
人間性ならわかるが、眼鏡が理由で振られるなんて思わない。
「コンタクトにしようかな……」
はぁーっと重いため息が口から落ちていく。
「さっきからため息ばかりついて、手が止まってるぞ」
「はいっ、すみません!」
斜め前から叱責が飛んできて、慌ててポスター丸めを再開する。
「さっさとやらないと終わらないだろうが」
「はいっ、すみません」
机の角を挟んで座っている男――谷敷課長はイライラしているが、カルシウム不足なんだろうか。
だいたい、なんで課長がポスター丸めなんて仕事をしているのかって、一緒に命じられた男性社員が急用ができたと逃げたから私を手伝ってくれているので文句は言えない。
「テキパキやれ、テキパキ」
「はい……」
それが現在、絶賛傷心中の女性に言う台詞か、とは思うが、彼は私が失恋直後だなんて知らないから仕方ない。
そもそもにおいて、私は谷敷課長があまり好きではないのだ。
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