11. 彼と新しいわたし

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お互いの息がかかるくらいに顔が近付いて、唇をぐっと押し付けられた。 温かい舌が入ってきて、柔らかく絡み合う。 「んっ……」 キスって、こんなに気持ちよかったっけ。 頭がとろけてしまいそうだ。 昨日初めて身体を重ねたわたし達は、もう一度ひとつになった。 やっぱりそれは自然な流れだった。 盛岡くんは丁寧で、繊細で、気持ちのいいところをピンポイントで責めてくれる。 「あぁあっ……!」 絶頂に達し頭が真っ白になると同時に、強く強く、その大きな背中を抱きしめた。 愛おしい。 彼が愛おしい。好き。愛している。 終わった後の盛岡くんは、また煙草を吸った。 その後ろ姿がどこか遠く感じ、不意に泣きそうになる。 でもカッコいいから、全て許せる。 そもそもわたし、彼女でも何でもないし。 ……そう、彼女でも何でもない……。 身体はもう十分に満足したけれど、心がどこか物足りない。何かが、欠けている。 わたしは見てしまっていた。 夜が完全に明ける少し前に目が覚めて、トイレを借りたとき。どこからどう見ても女子のアメニティ用の三角コーナーがあった。 洗面所には、なぜか片方だけの、小ぶりのキラキラしたピアスが置かれてあった。それは盛岡くんのものじゃないだろう。 盛岡くんには、多分、おそらく、付き合っている子がいる。 わたしがそれを責めることはおろか聞くこともできないのは、自分だって結婚しているからであり、これは大人の関係だとお互い割り切っているからだ。
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