11. 彼と新しいわたし

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気に入ったパーカーやトレーナーをいくつかと、ついでにシュッとしたジーンズも買った。 スニーカーも買った。 ちょっと奮発してダウンも買った。 独身時代に貯めていた自分のお金で、好きな服を好きなだけ。 買い物がこんなに楽しかったことなんて、すっかり忘れていた。 「葉山さん、絶対こっちの方が良いっすよ!似合ってる!」 一緒に歩きながら、満面の笑顔を浮かべて盛岡くんが言ってくれる。 その一言だけで全てが報われたような気がした。 自分自身を肯定されたような、心地良い感覚。 わたしはわたしのままでいいのだと認めてもらえたみたい。 ショーウィンドウに映るわたし達の姿は、服装の系統が似ているせいかカップルに見えたし、我ながらお似合いだと思った。 さすがにすっぴんのままいるのは嫌だったので、デパートに行ってコスメ売り場で一から化粧してもらった。 化粧されているわたしの様子を、盛岡くんは珍しそうにまじまじと見つめていた。少し恥ずかしかった。 完成したわたしは、いつもとは少し違う雰囲気で、大人っぽいのに老けて見えない。むしろ若く、綺麗になれた気がした。 「綺麗すぎるっしょ!」と美容師らしく盛岡くんが上手く褒めてくれるので、つい調子に乗ってしまい、つかってもらったメイク道具を全て購入した。 こうして、わたしは全身ごと生まれ変わった。 見た目も、中身も。 どんどん盛岡くんの色に染まっていく。 まだ離婚したわけじゃないのに何をしているのだろう、とたまに自己嫌悪に陥りそうになるけど、それも全部彼の笑顔を見たら吹っ飛ぶ。 さようなら純二さん。鏡を見ながら、わたしは心の中で呟いた。
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