11. 彼と新しいわたし

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「ねぇ」 気付けばわたしは口を開いていた。 「あのさ」 「ん?」 「盛岡くんってさ、彼女いるよね?」 聞いちゃだめだ、聞いちゃだめだ。頭ではそうわかっているのに、言葉が勝手に出てしまう。 「……」 なんて返そうか迷っているのか、そしてそれは図星だからか。 盛岡くんはしばらく黙った。 気まずい沈黙が、10秒ほど流れる。 聞かなきゃよかった。でもこれ以上聞かないでいることも無理だった。 そして盛岡くんからやっと出た言葉は、 「……いたけど、最近別れたんだ」 嘘だ。 前を見たまま少し笑いながら言う彼の横顔が、とても憎い。 けれどやっぱり綺麗で、カッコいい。 夕焼けに照らされた肌の艶やかさがその罪深さを物語っている。 責めたかった。 嘘でしょ、嘘つき。最低。彼女いるくせに。 そう言えたら。そう言いたかった。 でも…… 「そっか。別れたんだ。じゃあ今はいないんだね」 最後の理性で、わたしは気持ちを堪えて精一杯明るく言った。 もういいや。 辛いけど、憎いけど、それでも一緒にいられるのなら、もう騙されたふりをしていよう。 今彼に見捨てられたら、もう生きていけない。
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