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12. 新しいわたしと新しい夫
盛岡くんの家に住み着き、三日が経った。
わたしは彼の家で料理をつくり、掃除をし、勝手に奥さんのようなことをしている。
新しい生活は思いのほか落ち着き、盛岡くんは優しかった。
純二さんからの連絡は、家を飛び出たあのときからずっとないままだ。
それが余計にわたしの不安を煽る。
あの純二さんがあのままあっさり割り切るとはとても思えない。
「じゃあ、行ってきます!」
「行ってらっしゃい!」
ばたばたとせわしなく身支度をし、急いで玄関へ走る盛岡くんを慌てて追いかける。
「気を付けてね!」
「うん!」
こちらを一瞬だけ振り向き、すぐに扉を開けて出て行ってしまった。
行ってきますのキスもなければ、ハグもない。
あれはわたしと純二さんのルーティンだったわけで、わたしと盛岡くんの関係には名前すらないのだから、これはこれでいいのだ。
そう思っているのに、どこか物足りない。
わたしは閉められた扉を見つめ、立ち尽くす。
純二さんのときは、一人になった瞬間にほっとし開放感に満たされていた。
だけど今は、一人になった途端に孤独が押し寄せてきて、胸がぎゅっとなる。寂しい。
寂しい、だなんて。わたし、どうしちゃったんだろう。
ソファにちょこんと座り、テレビでNetflixをかける。
観たかった映画やドラマはたくさんあるのに、どれもあまり頭に入ってこない。
今日は何時に帰ってくるんだろう。わたしはいつまでここにいていいのだろう。これからどうしよう。
気付くとそんなことばかりを考えてしまって、病みそうになる。
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