2. わたしと彼

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一人で勝手に落ち込んでいたら、彼の顔が突然ぱっと明るくなった。 まるで子犬みたいな、無邪気な笑顔。 さっきまでの何を考えているのかわからない真顔とのギャップがすごい。 これは…… 良い………! ふと、この感覚を思い出した。 小学生の頃、好きだったアイドルグループの男の子がいて、そのときの気持ちと似ている。 長らく忘れていた感情。 最近でいう“推し”というやつ? 推せる。彼のこと、すごく推せる。 「あ!そうだった、ごめんなさい!杉本さんから聞いてたんだった。葉山さんはいつも決まった髪色にするって言われたんだったー」 「あっ、そ、そうだったんですね!」 「はい。すみません、うっかりしてた」 謝りながらもてへへと笑うその姿に、きゅん。 「あ、僕、盛岡龍樹(もりおかたつき)っていいます。先月入ったばっかなんですけど、よろしくっす」 鏡越しに、あらためてぺこりと頭を下げられる。 モリオカタツキ……。 「へぇ、先月!ってことは……新人さんですか?」 「まぁ、そんなとこっす。一応、昔ちょっとだけ働いてて、また美容師再開したって感じですかね」 ということは、二十歳とかではないってことかな? 美容師さんらしい、からっとした気さくな喋り方。モテるだろうなぁ。というか、チャラそう。 純二さんとは、全然違うタイプだ。
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