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「じゃあ、一度辞められてたってことですか?」
「そうっすそうっす。バーで働きながら、友達とバンドやったりしてました。結局解散しちゃって出戻りって感じですね。やっぱ資格とっててよかったーって思いました」
“バー”で働きながら“バンド”
で、現在“美容師”……。
それって、それって、もしかして……
「ははっ、みんなによく言われます。お前“付き合ってはいけない3B”全部やってんじゃん!って」
わたしが言うより先に、彼が自分で言った。なにも恥じることはないように、豪快にけらけらと笑っている。
「あははっ、わたしも思ったけど、言っていいのか迷ってました」
「全然いじってください!あんなのただの偏見だしね。俺、めーっちゃ一途だから!」
ドヤ顔ともいえる少しいたずらっぽい笑顔で、今度は鏡越しではなく直接顔を覗き込まれて言われた。
きゅん。
なんだ、なんだ「きゅん」って。
胸が、きゅってなる。
ぎゅっ、じゃない。きゅっ、だ。
わたし、わかる。もう30歳だもん。
自分で自分のことを「一途」と言う男を、信用しちゃいけない。
そういう男にかぎって、表では彼女のことを大切にしているふりをしながら、陰で浮気相手ともまめに連絡とったりしてるんだから。
さっき顔を覗き込んできたのだってあざといし。
絵に描いたような、チャラ男じゃん……。
なのに、なのに。
顔、カッコイイ………!
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