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「一途…なんですか?」
一応、聞き返してみる。
「めちゃくちゃね!まぁ今、彼女がいるわけでもないんだけど」
ほっ。
ほっ?え、わたし、安心してる?
こんな若い男の子相手に、なに考えてるんだろう。
「葉山さんは?一途ですか?」
なんでもないように聞きながら、彼がわたしの髪の毛を両手で掬う。
優しくくしでとかれて、気持ちが良い。
「わたしは……どうだろう」
はっきりと答えられない。
だって一途とか以前に、わたしは人を本気で好きになったことがないから。
「えー、旦那さんに一途じゃないんですか?」
旦那さん?なんで結婚してること知っているんだろう。
あ、そうだ。……指輪だ。
わたしの左手の薬指には、結婚指輪がきらりと輝いている。
「いいなぁ、俺も早く結婚したい」
またいたずらっぽく笑って言われたそのさりげない言葉に、なぜか胸がチクリと痛んだ。
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