2. わたしと彼

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自分でもびっくりするくらい、あっという間の2時間だった。 「おぉ〜」 鏡の中の自分をみて、ついうっとりしてしまうり 彼の手さばきはアシスタントは思えないほど、なかなかの腕前で、正直杉本さんよりも良いかもしれないと思ってしまった。 わたしはここ数年、ずっと同じ髪型だった。 アッシュ系の茶色で、セミロング。前髪はウェーブに流すという、よくいる量産型タイプな感じ。 しかし今日は、盛岡くんにすすめられて少し冒険してしまったのだ。 いつもよりほんのちょっと、明るめの髪色。 ハイライトをところどころ入れて、金色の部分もつくった。 前髪を切ってもらって、なんとなく若くなった気がする。 「いいっすね〜!」 わたしの背後に手鏡を持ち、鏡越しに後ろ髪見せてくれたながら、彼が高いテンションで言う。 「……うん。なんていうか、華やか……になった気がします」 少し髪型を変えただけなのに、本当に違う自分になったみたいだ。 こっちの方が、良い。 「こっちの方が、絶対良いですよ!めちゃくちゃ似合ってます!……ってなんかすいません、俺の好み押し付けちゃったみたいで。でも本当に似合うと思ったから。想像以上に似合っててびっくりだけど」 あぁ。お世辞だとわかっていても、顔がほころんでしまう。 “俺の好み” か。 なんか嬉しいな。 「わぁっ!りらちゃん、可愛いっ!」 後ろを通りかかった杉山さんが、わたしを見て驚いた顔をして言った。
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