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「じゃありらさん、これからもよろしくお願いします」
お店を出たところまで送ってくれた盛岡くんが、ぺこりと頭を下げた。
にこっと笑った彼の顔に、また“きゅん”。
あぁ、素敵。
なんなんだろう、このなんともいえない幸福感。
心の中に欠けていた何かが、すっぽりと当てはまったような感覚。
なんとなく、わくわくする。
アイドルの男の子に夢中だった、昔のわたしに戻ったみたい。
なんか懐かしいな。
ーーそうだ。
彼をわたしの“推し”にしよう。
べつにどうにかなりたいなんて思わない。
会えたらラッキーだし、会えなかったらちょっと悲しい。
目の保養、ただの癒し。
アイドルを好きになるのと同じ。
その帰り道、見慣れた街並みを眺めながら、行きつけのスーパーで食材を買いながら、思わず鼻歌を歌ってしまった。
わたしの退屈だった毎日が、ほんの少しだけ色を持ったように。
推しができた!
ただそれだけだと思っていた。
彼とどうにかなりたいなんて、これっぽっちも思わない。そういうのじゃ、ないから。
………多分。
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