3. 元カレとわたし

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夜はいつも通り、仕事から帰宅した夫につくったご飯を食べさせる。 今日はカレーだ。夫好みの、甘口。 「美味しい」「美味しい」と何度も言ってくれるので、つくり甲斐があって嬉しい。 仕事の話を、聞く。 いつもと同じ会話、ルーティン。 純二さんの前で、わたしは常にニコニコしている。 怒りもしないし泣きもしない。かといって特別に喜んだりすることもあまりない。 「りらは情緒が安定してるからいいよな。昔の女でとんでもないメンヘラがいて、あれは参ったよ」 なんて以前、純二さんが言っていたっけ。 わたしはべつに、情緒が安定しているわけではない。 ただ、感情がないだけ。 そこまで気持ちに盛り上がりがないだけだ。 「今日は疲れたから先に寝るよ」 そう言ってあくびをしながら、純二さんは先に寝室に入ってしまった。 「お疲れ様。ゆっくり休んでね、おやすみ」 とわたしは微笑みかける。 寝室の扉が、閉められる。 心の中で、ガッツポーズをしている自分がいた。 リビングで一人きりになったわたしは、再び開放感に包まれた。 ソファにごろーんと寝転び、テレビのリモコンを手に取ると、さっきまで流れていたニュース番組からNetflixに切り替えた。 毎週配信されるお気に入りのアニメを一人でゆっくり観る。 たまに「ふはっ」とだらしなく笑ってみたり。 彼から七年ぶりに連絡がきたのは、そうやってだらだらと過ごしていた午後11時過ぎだった。
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