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夜はいつも通り、仕事から帰宅した夫につくったご飯を食べさせる。
今日はカレーだ。夫好みの、甘口。
「美味しい」「美味しい」と何度も言ってくれるので、つくり甲斐があって嬉しい。
仕事の話を、聞く。
いつもと同じ会話、ルーティン。
純二さんの前で、わたしは常にニコニコしている。
怒りもしないし泣きもしない。かといって特別に喜んだりすることもあまりない。
「りらは情緒が安定してるからいいよな。昔の女でとんでもないメンヘラがいて、あれは参ったよ」
なんて以前、純二さんが言っていたっけ。
わたしはべつに、情緒が安定しているわけではない。
ただ、感情がないだけ。
そこまで気持ちに盛り上がりがないだけだ。
「今日は疲れたから先に寝るよ」
そう言ってあくびをしながら、純二さんは先に寝室に入ってしまった。
「お疲れ様。ゆっくり休んでね、おやすみ」
とわたしは微笑みかける。
寝室の扉が、閉められる。
心の中で、ガッツポーズをしている自分がいた。
リビングで一人きりになったわたしは、再び開放感に包まれた。
ソファにごろーんと寝転び、テレビのリモコンを手に取ると、さっきまで流れていたニュース番組からNetflixに切り替えた。
毎週配信されるお気に入りのアニメを一人でゆっくり観る。
たまに「ふはっ」とだらしなく笑ってみたり。
彼から七年ぶりに連絡がきたのは、そうやってだらだらと過ごしていた午後11時過ぎだった。
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