3. 元カレとわたし

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あえて人目の多い昼間を選んだのは、渉が興奮しないため。 いい歳した大人が二人、公園のベンチに座って別れ話をした。 「俺は別れる気ないよ」 堂々と、はっきりと、渉は言った。 けれどわたしは無理だった。 「わたしは別れたいの。ごめんね」 「なんで?俺、なんかした?マジで全く思い当たらないんだけど。こんなに尽くしてるのに、いったい何が不満なわけ?」 「尽くしてくれてるのは、すごく嬉しいよ。でも本当に、そういう問題じゃないの」 「じゃあ何?」 引き攣った笑みを浮かべながら、怒りを堪えているような渉が怖かった。 ただただ心苦しくて。そこに愛なんて、なかった。ていうか、愛なんて知らない。 「これはわたし自身の問題なの。渉にはきっと、もっと素敵な人が現れるよ」 「でた、そういうの言う系ね」 「……」 「俺は好きだよ、りらのこと」 「……うん」 好き、っていう感情を、この人は知っているんだ。 「本気でりらのこと愛してた」 そんな言葉を、平気で言えてしまう。 すごいな。 わたしには、無理だ。 「ありがとう」 「なに?それだけ?」 「……ごめんね」 「……」 変な沈黙が流れた。 辺りは遊具で遊ぶ子供たちの声で賑やかなのに。 まるでわたし達だけ、別の世界にいるみたい。 いや、“私だけ”か。 「最後に、一ついい?」 渉が、遠くを見ながら呟く。 「なに?」 「……俺のこと、ちゃんと好きだった?」 一番聞かれたくない質問だった。 わたしは咄嗟に何も答えられなかった。
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