3. 元カレとわたし

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わたしも他のみんなと同じように、本気で人を好きになって、恋愛して、結婚して。幸せに暮らしているんだって。 ずっと“みんなと同じ”になりたかった。 だから、みんなと同じふりをしていた。 そしてみんなと同じように結婚した。 感情に欠如があると思われたくなくて。 30歳にもなってまだ一度も本気で好きになる気持ちを知らないなんて、恥ずかしすぎるから。 『へぇ、そうなんだ。よかったな、ちゃんと好きになれて。りらには無理だと思ってた笑』 返ってきた嫌味な言葉にさえ、胸が痛む。 『うん。安心して!笑』 『なんか悔しいけど、幸せになれよ笑』 適当なグースタンプを押して返すと、もうあちらからの返信はなかった。 また嘘をついてしまった。 今までの恋愛で。純二さんと結婚してから。わたしはいったいどれくらいの嘘をついたのだろう。 こんなわたしにはいつかきっと、罰が当たるはずだ……。 元カレからの突然LINE、変な会話のせいで、なんだかもやもやとした気持ちになってしまった。 テレビを消し、寝室に行く。 ベッドで眠る純二さんの隣に潜り込むと、無意識なのか寝息をたてながらぎゅっと抱きしめられた。 胸が、痛い。
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