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「お、お願いします!」
遅れて、その男のあとを、レナの叫び声が追った。
そして、先程までは寝ていた少年を見据える。自分は、グーシオンのように力を見ることはできない。
それでも、分かる。彼は、すでに異様な空気の塊となっていた。
それに伴い、この小さな部屋にも緊迫した空気が流れている。いや、この部屋だけではない。勘のいい鳥たちが逃げるように飛び去っていた。
そう。それほどまでに彼の周りの空気は異様なのだ。そして、またそれは威容とも言い換えることができる。
「あ、あの、落ち着いて……」
言葉をかけてみるも、反応は無い。壊れたように、何かを呟き続けている。
さらに、透き通るようだった蒼穹は、今や不気味な雲に覆われようとしていた。ただの雨雲ではない。任意に作られた、魔法だと簡単に理解できる。
「いったい何なんだ? 俺はどうしてここにいる? 病院にいるはずじゃないのか? ……どうして病院なんだ!?」
「落ち着いてください! このままじゃ……っ!!」
レナは異質な空を見て、たじろぐように言った。雲はどす黒く、青を覆っている。
「グーシオンさん、早く……っ!」
レナは願いをこめ、唯一の扉を見た。
その時、この城の中でも騒めきが起こっているのを感じる。やはり、これは異質なのだろう。
「(こうなったら……!)」
レナは、一つの決心をする。自らの手で彼を“気絶”させようと言うものだ。
そうでもしなければ、この騒動は修まらないだろうから。
レナが彼に手を伸ばそうとしたその時だった。唯一の扉が、勢い良く開かれたのは。
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