第二夜「旅立」

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城下町は悲惨なことになっていた。 誰かが風の魔力を操り、 巨大な魔法を起こした。 その魔法、一般名は〝ライトニング〟。風の初歩魔法。 それの巨大なものだった。 その被害は、町に空いた巨大風穴によって物語られている。 幸い、落ちた場所は人気の少ない一角だったので、被害はあまり大きくはなかった。しかし、幾人もの人間が、死んでいた。 死者は、全てが感電死。殆んどが、即死だっただろう。雷に打たれ、運よく生き残ったものは、いない。 そして、それを起こした張本人は今牢獄にいた。気味の悪い程に薄暗い、多重結界の牢獄。 独房にしては少し大きい牢獄で、横たわっていた。 それは、彼が危険人物として扱われている故。 暴走とはいえ、多くの人を殺しているのだから、そこには十分すぎる理由がある。即座に死刑とならなかったのは、単にそう言う決まりだからだ。 「しかし、こんなガキがあんな巨大な魔法を使えるとわな。まったく、世もこえぇもんだ」 不精髭を存分に伸ばした、中年の男は、ぶっきら棒な様子で言っていた。 しかし、周りには彼以外存在しない。まったく無意味な言葉である。 それは己の力の過信か、それとも結界への信用か。 しかし、その状態が、彼女にとっては好都合だったのだ。 天井の木の骨組みに匠に掴まり、機会をじっと伺っている。息を潜め、確実に任務を遂行するために。 無精髭の男は、それには当然気付かない。それどころか、呑気にも鼻唄まで歌い出していた。 よほど暇だったのだろうか。否、それは、絶対的な安心感があるからこそだった。 その様子を、彼女は逃すはずがない。出来上がった機会を無駄にしないよう、フクロウのように、音もなく体を動かす。 そして、跳躍した。 その刹那、無精髭の男はそれに気付くが、遅すぎる。既に、避けることはままならない距離とスピードだった。 「はっ!」 空中からの不意打ち。 首の根元を狙った飛び蹴はみごとに命中した。寸分の狂いもなく決まったためか、それとも、全体重を乗せた攻撃からか、脳みそを揺らされた男は気絶をしざるを得なかった。
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