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何処にでもいるような、長髪の魔術師(ウォーロック)。
彼の情報は的確すぎるのだ。それには、彼女すらも驚いていた。
「(もしかして、預言者だったのか?)」
しかし、それはない。
「(いや、違うか……)」
かと言って、どの様な情報網があるのかは全く理解できない。スパイがいると言うのが妥当だが……
「あの……?」
少年の一言で現実へと引き戻される。
「おっとすまない。なんだ?」
そして、彼女は自分の買いかぶりに反省をした。
薄暗い牢獄で会話が再開される。少年は自分の状況が一切分からずに、彼女は目的を遂行するために。
「あなたは、誰ですか?」
「……」
彼の初歩的な質問に、場は妙な緊張が張り詰めた。
例えるなら風船。
張り詰めた風船が今にも割れようとしていて、割れたら中から紙吹雪きとかテープとかが飛び散るのだ。
そんな状態。
「くっくっ……この状況で面白い事を訊く……いや、この状況だからこそか?」
何時ものように自分で答えを導きだす。
ただ薄暗いだけの空間に、妙な笑い声だけが谺している。
それは風船。
耐えに耐える、奇妙な風船。
「すまないな……私はアイニ。アイニ・マルファイだ」
それでも、その風船は強かった。
「君は、セエル・ラマンスとお見受けするが?」
少しおどけて言ってみせる。
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