第二夜「旅立」

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しかし、アイニはまだ気付いていなかった。 いや、むしろ気付けなかったと言うべきだろう。 もっと言えば、気付く事を怠った。 少年の、セエルと呼ばれた少年の言葉が、アイニにはとても滑稽で、滑稽で、思わず今が仕事の最中と忘れてしまっていたのだ。 だから、こんな薄暗い牢獄で、こんな密閉された空間で、声を上げすぎてしまった。 セエルの存在が、彼女を確実に崩してしまっていた。 最初から会話はすべきではなかったのだ。 それが、最大のミスだった。 「お、おい! 結界が解けているぞ! 兵を呼べ! 早く! 早く!」 「なに!?」 そして、大きな失敗を生み出した。 「くっ! 少年、逃げるぞ!!」 「逃げるって何処へっ──うわ!」 アイニはセエルを抱え上げていた。 力強く、しかし、物を扱うように。 だが、セエルは男である。まだ若いとはいえ、相応の体躯を持っている。 そう長くも持っていられないことはすぐに理解した。 「無理か……なら……」 この時こそ、冷静に考える。 地を把握し、最善の逃げ道を作り出そうと、見渡した。
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