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アイニは、鬼のような形相でセエルを睨んでいた。
夜叉般若とも言えるその様子。セエルはただただ、たじろぐ。
「魔法って……げ、ゲームか何かですか?」
出てくる言葉も弱々しく、一歩引いた位置から喋っているようだった。
「貴様は私を舐めているのか?」
しかし、アイニは怒りに表情を歪め、ドスの効いた声を発している。
「いや、そうじゃな──」
「ならとぼけるな! あの魔法はなんだ! それにあの結界! どうしてお前は同時に二つの魔法を使える!? 答えろ!」
滝のように、アイニの口から幾重もの言葉が流れ出る。
そして、それは確実にセエルへぶつかり、弾ける。ぶつかった場所は紅くなり、いずれは壊れる。
それは心。そして、風船。
少しずつ少しずつ刺激され、どんどんと弱くなる。そして、割れる。割れれば、轟音とともに針が飛び散るのだ。
そして、セエルのそれは、弱く、脆かった。
「いい加減にしてくれ! あんたは何を言っているんだ!? 魔法? そんなもの使えるわけないだろ! なんだ? このテーマパークじゃ魔法が使えるのか!? そんなわけないだろ! そんな空想なんて在るわけないじゃないか!!」
言葉の怒濤に、次にアイニがたじろいだ。むしろ、そこには畏怖すらも感じてしまう。
そして、アイニは考えた。何処にそのような勢いがあるのか。彼をそうさせる根本の原因は何か。
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