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──あぁ、死んだのか……
少年は思う。気付いたときにはトラックはもう目の前だった。
避けれるはずもない。
だけど、
──生きていたかった……
少年は思う。鬱陶しくも楽しかった学校生活。もう、終わり。
戻ることは出来ない。
だから、
──どうなるのだろう……
少年は思う。人間が、生き物が死ねば、何処へ逝くのだろう。
答えは、もっている。
ゆえに、
──どこにも逝かない……
少年は思う。恐い。
死後の世界を信じたことはない。幽霊も信じない。神様も。何故なら、見えないから。
見えないから、そんなものは、無い。
だから、死ねば、何処へも逝かない。
死んだらもうそれまでで、無に帰す。
それで、終わり。それで、終焉する。
そのはずなのに、そうならなければいけないはずなのに、少年は、まだそこにいた。
何かは分からない。だが、確かに、自分が、在る。
ただただ、空虚な喪失感が全身を駆け巡っている。
だからこそ、自分はまだ在ると、理解してしまう。
その度に、身体に、身体中に、激痛が走っていた。
何もない。何もないのに、痛い。
なんで、どうして、何故、こんなにも、痛い?
「うわぁぁぁぁぁ!」
そう、叫んだつもりでいた。ただ、空虚に谺しただけだった。
刹那、
──……
「!」
確かに聞こえた、声。
──た……
先より確実に、聞こえる、声。
──繋がった……
それは、自己陶酔したような、男の声。
──始まる……
それっきり、気が付けば、意識は暗転していた。
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