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それに、目の前にいる少女の格好も変わっている。
理由は、“その二つだけ”だった。
本来疑問を抱くべき所に抱かず、判断材料としては低価値なものしか見ていなかったのだ。
しかし、それは、人の反応としては最もたるべきものなのだろう。
意識が存在する中、自分がすでに死んでいると誰が考えるだろうか?
自分の今いる場所が、地球のどこかではないと考えるだろうか?
そう。考えないのだ。考えられるはずも無いのだ。
平和にボケた人間“だった者”が気付けるはずも無かったのだ。
「いけません。貴方が治ればつれてこいと言われていますし」
凛とした態度で語り聞かせるように言った。そこに感じる一抹の違和感。
「まだ歩けませんよ?」
「その喋り方、辛くないか?」
そう言いながら、密かに体を動かしてみる。力が入らない状態なのを確認できた。
「え?」
「いや、普通にしていいよ?」
「いえ、仕事ですので」
「(やっぱりテーマパークかなにかか……)」
そう、改めて実感する。
「そう」
「はい」
「……」
「……」
話すことなど皆無に等しく、沈黙だけが谺していた。
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