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「アーシャ、チェルを連れてボクから降りて!」
それが何を意味するのかわかり、私は布で抱っこしているチェルを抱え、シシから飛び降りた。そのすぐ後"ドゴーーン"と大きな音が聞こえ振り向くと、シシと瘴気幻影のワーグが体同士で、ぶつかり合う姿が見えた。
(シシ! シシには傷付いてほしくない……だけど、彼は私たちを守る為に戦っている。いま、私が出来ることをしないと)
シシとワーグが戦う音が洞窟内に響くなか。私は唇を深く噛み、己の杖を取り出し浄化魔法を唱えはじめた。
――はやく、はやく、この場所を浄化するわ。
「【はびこる瘴気を、この地を浄化せよ!】」
手に持つ杖が光り、浄化の光があたりを照らす。シシと戦うワーグの苦しむ"グワァー"と声が聞こえた。だが洞窟内の瘴気が濃く、一度での浄化では効かず、ワーグは体制を整えシシに噛み付いた。
「ウ、グッ――!」
「シシ!」
「ア、アーシャ、キミのそばにはチェルもいる。ボクのことを信じているなら近付くな!」
「……!」
シシが強いことは知っている。あなたは住んで間もない私のために傷付き魔物、生き物と戦いお肉をとってきてくれた。
『アーシャ、肉だ! 肉を食べよう』
『ありがとう、いまから捌くわ』
(はじめは私も色々あったから、心が疲れ切っていた。だから、それが彼の愛情表現だと、初めは気付かなかったけど……シシの私への愛の大きさ、強さにいつの間にか好きになって、愛に変わったわ)
「愛している、シシ。あなたが私達を守ってくれるように、私もあなたを守る」
「うれしい、僕もアーシャを愛している。もちろんチェルもだ!」
「ボクもパパとママ好き」
いつの間にか目を覚ましていたチェルが、私にギュッと抱きつく。チェルの力が流れ込んできて私の魔力がます。でもチェルが瘴気幻影のワーグを見て怖がるかも。
「チェルしばらく、私に捕まって目をつぶていてね」
「う、うん。ボク、ママにぎゅーってする」
チェルは両手で、自分の目を隠した。
か、可愛い、チェルの姿に瘴気の中で微笑ましくなる。
――ママ、がんばる!
「可愛いなぁ〜。 パパもがんばるぞ!」
瘴気幻影のワーグと戦うシシの力が上がるり、私の魔力もます。可愛いチェルのおかげで、私たち夫婦の力が倍増した。
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