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きみは特別
この世界は、理不尽なことだらけだ。
例えば全校生徒約700人の高校の、たかがひとクラスの中でさえ、イケてるとかイケてないとか、そんな曖昧な判断基準で、勝ち組か負け組かが決められる。
金田美咲は、息をきらしながら、階段をかけあがっていく。
頭の中で、何度も何度も、繰り返し再生される佐川くんの声。
「なあ、金田ってさ、お前のこと好きっぽくね?」
「げ……マジか」
「なんでそんなイヤそうな顔してんの?金田だって一応女子じゃん」
「俺は、もっと可愛くてキラキラした子が好きなの!あんなイケてないガリ勉メガネ、恋愛対象にも入らねーよ」
“地味”で“イケてない”“ガリ勉メガネ”の“負け組”は、好きな男の子にさえ陰口たたかれて、プライドをズタズタにされなきゃいけないらしい。
……なんで、なんで、なんで!?
一体、わたしがなにしたっていうの!?
どうしてこんな、みじめな気持ちにならなきゃいけないの!?
屋上に続くドアを開けた美咲は、肩で息をしながら、目元をごしごしとぬぐう。
「あれ?金田さんじゃん。……大丈夫?」
「……漆原くん」
同じクラスの漆原一馬。
少し影のあるイケメンで、クラスで一二を争うモテ男。
勝ち組の頂点にいるような人に、よりにもよってなんで今、ばったり会ってしまうんだろう。
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