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どんなに時が巡ろうとも
「こんなこともあったのね」
ついソファで居眠りをしている間に小学生の頃の夢を見たようだ。
拾った仔犬にチョコと名前を付け、チョコレート好きな父親の誕生日プレゼントにするなんて子供ながらによく思い付いたものだ。
「ねえねえ、お母さん聞いて!」
学校から帰ってくるなり娘が弾丸トークを始めた。
「今度の日曜日に公園で保護犬の譲渡会をやるみたいだよ! ポスターが貼ってあって可愛い仔犬の写真が載っててさあ……」
見に行こうよ、うちでも飼おうよと娘は懇願するような顔でわたしに訴えてきた。気持ちは分かるが賛同はできない。
「犬を飼うのはねえ……お別れが悲しくて」
17歳で虹の橋を渡って行った愛犬チョコのことを再び思い出しながら、やんわりとわたしは娘に拒否反応を見せた。
「珍しいんだよ、前足の肉球の色がひとつだけ違うの。思わずスマホでポスター写してきちゃった」
――え?
娘が撮ってきたという写真を見せてくれた。どうやら今度は白い犬になって帰ってきたようだ。
名前は……スノーがいいかな。
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