公園で見つけた仔犬

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公園で見つけた仔犬

 うちのパパは甘い物が大好きで特にチョコレートには目がない。ママはよく「パパはカカオ中毒かもね」と怒るけど顔は笑っていた。  今日は日曜日。そしてパパのお誕生日でもある。わたしはパパのお誕生日プレゼントを買いに駅ビルへ来ている。  もちろんプレゼントはチョコレート。小学校五年生のわたしには高いチョコレートなんて買えないけど、パパはいつもわたしが選んだチョコレートを喜んで食べてくれるんだ。 「バレンタインはママに教わりながら手作りチョコレートに挑戦しようかな」  ラッピング用の袋やリボンの売り場で手作りチョコレートの材料を見てそう思った。  帰り道に通る公園のところに友達が見える。入口近くの草むらを覗き込んでいるみたいだ。私はそっと近づいて友達の背中をポンと叩いた。 「びっくりした! ねえそこにワンちゃんがいるんだけど」  友達に言われて草むらを覗き込むと小さいダンボールが見える。キュンキュンと鼻を鳴らすような声がかすかに聞こえていた。 「捨てられちゃったのかなあ……」 「ちょっと見てみようよ」  わたしは友達とダンボールの傍へ行き、半開きの蓋を開けてみた。 「やっぱりワンちゃんだね。見たことないからミックス犬かなあ」  友達は犬を飼っているので大体の種類はわかるみたいだ。 「こんなとこにいたら保健所に連れて行かれちゃうよ。かわいそう……」  友達がすごく悲しそうな顔をしながら仔犬を抱き上げた。茶色い毛並みで耳の垂れた可愛い仔犬だ。こんな可愛いのに捨てられちゃうなんて、わたしも悲しくなってきた。  外国ではプレゼントに犬や猫をプレゼントするというテレビ番組を昨日観たばかりだったからなおさらだ。  落とし物や忘れ物を交番に届けることは知ってるけど捨てられたものはどうしたらいいんだろう。 「連れて帰りたいけど、うちのマンションは犬一頭までって決まってるんだってお母さんが言ってた」  友達が泣きそうな顔でわたしの家はダメなのか聞いてきた。わたしとママは動物が好きなのにパパがペットは絶対に飼わないって言っている。動物園は連れて行ってくれるのに犬猫のいるペットショップは絶対に中へ入ろうともしないのだ。  交互に仔犬を抱っこしながらどうすればいいか考えたけど、良い案がなにも浮かんでこない。学校の先生に相談したくても今日はお休みだし。  友達がガックリうなだれている。どうしよう、わたしだってこの仔が保健所に連れて行かれるなんて絶対にいやだよ。 「見て見て、この仔の肉球ひとつだけピンク色してるよ」  友達にいわれて前足を裏返してみると黒い肉球のうちのひとつだけがピンク色をしていた。パパの好きなイチゴ味のチョコに少し似ている。  時間だけがどんどん過ぎて行き、夕焼けチャイムが四時半になったことを知らせる。いきなり大きな音にびっくりしたのか仔犬がわたしの腕にしがみついてキャンキャン鳴き始めた。 「そろそろ帰らないとお母さんが心配するかも」  わたしも同じだ。パパの誕生日プレゼントを買ってくるといって家を出てからかなりの時間が過ぎている。  腕にしがみついたままの仔犬を見るとわたしの目を見つめ返してきた。なんとかしないと……  どうしてもうちに連れて帰りたい わたしはを思いつき、友達に手伝ってくれるように頼んだ。  ――失敗してもいいから、自分の思ったとおりやってごらんてパパもママもよく言ってたよね。  
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