アンニュイなエクレア

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「お疲れ様です、一旦休憩でーす」 「楽屋に余ったエクレア置いてますので、良かったら召し上がってくださいね」  撮影のピンと張り詰めた空気が緩む中、若いスタッフたちが親切に夏木ユウコへ声をかけていた。 「ありがとう、すこし休んでくるわね」  今日もアンニュイ・エクレアの新しいCM撮影を終えた優子は楽屋へ入り、ソファへ腰掛けた。テーブルにはスタッフの言うとおり、エクレアが置かれていた。  ユウコがエクレアへ手を伸ばしかけた時、コンコンと楽屋をノックする音が聞こえてきた。どうぞ、と入室を促すとスタッフが入るなり話しかけてきた。 「失礼します、続きの撮影の件ですが。……あっ失礼しました、お疲れのようなので、しばらくしてからまた来ますね」  ユウコの様子をチラリと見ただけで、声も聞かずにそそくさと楽屋を後にしてしまった。 「疲れてるわけじゃないんだけど……」  ユウコはポツリと言う。
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