アンニュイなエクレア

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 コンコン、またノックの音がした。 「おつかれ、ちょっといいかな。……あれ、疲れてる?」 「ちょっと、あなた私のマネージャーでしょ。エクレアを持ってないときはこんなもんだって知ってるでしょ」  さきほどのスタッフと、いつも一緒にいるはずのマネージャーが同じリアクションをしたことに、ユウコは少し機嫌が悪くなった。 「あぁ、ごめんごめん」  マネージャーは軽く答えた。 「まぁ、いいわ。……エクレアを持っていないときには、どうも血色が悪く見えるのよね。元気キャラで売っていたのに、このままだとイメージが悪くなっていきそう」 「そんなことはないよ。今はエクレアのCMばっかりで、ユウコが可愛くみえるのはエクレアのおかげなんて言われることもあるけど、ちゃんと未来に繋がる仕事だよ。それにこのエクレア自体だって、味のラインナップとか新発売が続いていくからしばらく仕事に困らないし」 「そうだといいけどね。それにしてもこのエクレア……」  ユウコはテーブルの上に積みあがったエクレアを一つ取った。 「知ってるでしょ? ちょっと大きく作られてるの。こんな大きいの食べ続けたら太っちゃう。それに、肝心の味があんまりなのよね。山田製菓って、もともとスナック菓子とか作ってたところでしょ? こういうスイーツのノウハウが少ないのよ、きっと」 「まぁまぁ、広告主の悪口はほどほどに……」  ヒートアップしそうなユウコをなだめるマネージャー。なんだかんだ、ユウコのことをよくわかっているらしい。 「アンニュイ・エクレアだけじゃなくて、私もアンニュイな気分になるわ」  ユウコは一言だけぽつりと言った。 …… …………
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