アンニュイなエクレア

5/10
前へ
/10ページ
次へ
 それから、半年ほどたちアンニュイ・エクレアをとりまく事態は急変した。  ブームが去るのはとても早い。SNSの中心となっていた若者には「自撮りする際にエクレアを持つのは時代遅れ」という共通認識が急速に広まった。  ブームの際にはエクレアを片手に持った自撮りが、SNSのタイムラインにズラッと並んでいた。今となっては、それのどこが面白いのかよくわからなかった。たしかに写真に写る人物はとても輝いてみえたし、その写真に満足を覚える人がたくさんいた。  あえて言うなら、ブームになったからこそブームが終わってしまったのだ。  自分一人が知っているならそれで良かった。みんながエクレアを持って写真を撮っていれば、もともと写真映えする人がもっと写真映えするだけ、ということに気がついてしまった。片手はエクレアなので、構図での工夫も限られる。  いまはもう、ブームが何なのかよくわかっていない中高年だけがエクレア自撮りを上げ続けている。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加